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11/03/2022
2021年9月、グランドコンセプトを“爽快シビック”とした11代目ホンダ『シビック』が日本市場に投入された。そのシビックのオーディオとして初めてEXグレードに採用されたのが「BOSEプレミアムサウンドシステム」である。ここではその試聴レポートをお届けする。
BOSEとカーオーディオの結びつきは1983年のキャデラック『セビル』に搭載されたことからスタートした。この時、世界で初めて車種専用のカスタマイズオーディオとして誕生しており、これをきっかけにBOSEのオーディオシステムは世界中の名だたるクルマに採用されてきた。ホンダとの結びつきも深く、これまでに初代『NSX』や2004年に登場した『レジェンド』にも搭載されて好評を得た。
ただ、先代レジェンド以降、ホンダはブランドオーディオの搭載を一旦中止。そうした中、ホンダは11代目シビックの導入にあたり、一括企画の車両開発を導入し、その一環としてプレミアブランドを採用することを決定。今回、ホンダとBOSEの音作りの方向性が一致したことを受け、その共同開発パートナーとしてBOSEが選定されるに至ったという。
新型シビックには、一新されたインテリアに合わせて精密に設計された12スピーカーのBOSEプレミアムサウンドシステムが搭載されている。
その内訳は、前席用として左右フロントドアに17cmワイドレンジスピーカーをインストールし、左右Aピラー側にはツィーターをインストール、さらにダッシュボード中央には8cmミッドレンジスピーカーを組み込む。リアは左右ドアに13cmワイドレンジスピーカーとその上にツィーターを組み合わせた。また、左右リアクォーターにも8cmミッドレンジサラウンドスピーカーをセットアップした。
特にこだわったのがAピラー内に収められたツィーターの構造だ。表面には金属製極薄グリルを採用し、ツィーターを取り付ける周囲もホーン状にえぐって対応している。これによって、それでなくとも指向性が強い高音域を、車内の隅々まで行き渡るよう広範囲に放射できるよう工夫を施しているのだ。
これに加えて、カーゴルーム右側面にインストールしたのが容積10Lとするクラス最大級のエンクロージャーを持つサブウーファーで、ここには20cm口径ネオジウムドライバーユニットを組み込む。これが強力な低音再生を可能にするのだ。そして、これらを駆動するのが12chデジタルアンプで、ここに組み込まれたイコライザーによって新型シビック用にカスタマイズ最適化されているわけだ。
試聴はまずは停車状態で運転席と後席左側で行い、続いて走行しながら運転席で行った。用意された試聴ソースはクラシックやジャズ、ポップスなど多岐にわたったが、偶然にも自分が試聴ソースとしているダイアナ・クラールのテンプテーションが収録されており、これを中心に試聴することにした。
再生して印象的だったのが、ハスキーにしてシルキーな彼女の歌声を、繊細なまでに忠実に再現していたことだ。演奏スタートから続くベースの弾きもリズミカルに丁寧に再現し、彼女の歌声が聞こえてくるまでのワクワク感がたまらなく心地良い。特に演奏スタートで“カン!”と叩くドラムスティックはその余韻まで伝えてくるリアルさだ。これはまさにツィーター部に施された加工が功を奏したものと推測される。ステージ感もダッシュボード上にキレイに再現されており、演奏しているリアルさがしっかりと伝わってくるようだった。
ここで本システムが備える「Centerpoint」を試してみた。これは車内のどの位置に座っても、まるで「音楽の中心」に座っているような、広々とした音場を楽しめるというもの。信号処理にはデジタル技術が使われており、これが左右2chソースを劣化のない状態サラウンド効果を可能にしているわけだ。
このモードをONにすると、全体がフワッと浮き上がって演奏者に取り囲まれたような雰囲気になる。それでいてダイアナ・クラールのボーカルはきちんとセンターに定位している。低域の曖昧さもほとんど感じられず、芯のあるしっかりとした低域を聴くことができた。一般的にはサラウンドモードとなれば、どことなく定位があいまいで落ち着かない印象だったが、このCenterpointを聴くようになってサラウンドへの概念は大きく変わったと言っていい。
次に同乗者のつもりで左後席に移動してみた。ここではセンターポイントにより、臨場感はさらに高まって包み込み具合がさらに増す印象を受けた。前席よりも低域も強めに感じるのはサブウーファーが近いせいもあるだろう。しかし、それが低域を身体で受け止める格好となり、よりリアルな感覚で音楽を聴くことができた。
ただ、少し気になったのはリアクォータースピーカーの存在が強めに出る傾向にあったことだ。本来ならサラウンド効果を高めることを目的に装備されたと思うが、ボーカルがやや後ろに引っ張られ気味となっていたのだ。ただ、ボーカルのないソースではそうした違和感はほぼなくなった。むしろ、包まれ感が強くなって心地良さは明らかに増していた。
そして、いよいよ走り出しての試聴だ。選んだルートは首都高・飯倉ランプから都心環状線を経由して湾岸線に入り、辰巳第一PAでシステムの各種設定を切り替えを行った。さらに首都高9号線から箱崎JCTを経由して霞が関ランプから出路するルートを繰り返すことにした。
そのサウンドは極めて快適だった。ここではソースを他のポップスやクラシックなども聴いてみる。ポップス系は歯切れの良い演奏にしっかりと追従し、ずっと聴いていても楽しくなる印象だ。クラシックはフルオーケストラでレンジの広さを感じさせるダイナミックさを表現し、バイオリンのかすれるような響きにも高精細に再現していた。ドライブしながら安全かつ心地良いと思うレベルまでボリュームを上げても何ら不満は感じない。明らかに普段聴く純正オーディオとは次元の違いを感じさせるスペックと言えるだろう。
ここで効果を体感したのが、「ダイナミック・スピード・コンペンセーション(DSC)」と呼ばれる機構だ。
これは車速に応じて音量と音質を自動調整する技術で、走行スピードが上がってもドライバーはボリュームなどをいじらなくても快適に音楽が楽しめる。実はこの機能そのものは決して珍しいものではない。多くは段階を追って調整する機能を搭載している。BOSEはそれを連続可変で作動させる上に、車速から推定したノイズレベルをもとに聴いている音楽の音量を周波数帯域ごとに自動調整するということ。つまり、補正の対象は単に音量のステップアップ/ダウンだけではないのだ。
この状態で首都高速や一般道を走行したわけだが、実は走行中に一度も音量調整をすることはなかった。速度が上がればノイズレベルが上がるのは当たり前であって、中には多少荒れた路面でノイジーになることもある。それにも関わらず、補正が行われたことにも気付かず、ずっと心地良いレベルで音楽を聴き続けられたのだ。つまり、これはDSCの制御が乗員に気付かせないほど巧みに行われていたことを意味する。
今どきはイヤホンで音楽を楽しむ人が増えている。しかし、耳が解放された状態で聴く音楽はどこかホッとする気持ちに浸れるのは確か。しかも、「BOSEプレミアムサウンド」は、音量を下げても低音の豊かさは変わらないという素晴らしさを持っている。同乗者がいて、音量を控えめにしても心地良いサウンドは変わらず楽しめるのだ。まさに音量にかかわらず最良の状態で音楽を楽しめるのが本システムの魅力と言えるだろう。